『 旅のおわり世界のはじまり』感想|評価★★★☆☆ good!
総評
ウズベキスタンと前田敦子、という異色なかけ合わせに
いつの間にか主人公の心情と一体化し、ココロがさまよい始める
目次
鑑賞理由
日本とウズベキスタンとの合作映画で
黒沢清監督×前田敦子主演、の3作目。
黒沢清監督が、ウズベキスタンに以前からとても興味を持っている、という話と
監督が前田敦子に対して並々ならぬ存在感を持つ、
稀有な女優として絶賛している、ことが鑑賞理由です。
映画の背景
この映画は、ウズベキスタンと日本と国交樹立25周年、
そして
日本人捕虜が建設に関わったナボイ劇場完成70周年、
の記念で動いた事業。
周年事業にはお金が動きます。
いかにも周年事業で国交を意識して
大々的に映画を作ると失敗することが多いです。
こういうタイプの映画を作る監督として
一番遠い存在が黒沢清監督でした。
周年事業をきっかけにして作られた映画を
黒沢監督はどう撮るのか、
ひとつの見どころになっています。
キャスティング
前田敦子の映画なので
キャスティングは、そこにつきます。
わき役の方々も実力者ぞろいで
演技はとても自然に見えました。
感想
ウズベキスタンという異国の地を背景に
前田敦子が、彼女の心情にまかせて、右往左往して、ずっと動き回っている、
そんな異色な映画です。
黒沢監督の女優としての彼女に対する入れ込みが尋常じゃなく
彼女を使って自分の世界観を映画で表現してみました、という
やや実験映画的な、あいまいさ、微妙さが残ります。
観客としては感情移入はしにくく、
どう捉えていいのか、よく分からない流れやシーンが
次々と出てきます。
見ている方も、心中穏やかではありません。
さまよう前田敦子が夢か現実か、白昼夢の中で
ナボイ劇場で「愛の讃歌」を歌い上げます。
うまいのか、下手なのか、とにかく微妙。
感動のシーンとはいいがたいその演出方法、
描き方に、黒沢清監督の作家性がうかがえます。
日本とウズベキスタンの周年事業については
セリフで説明してるのみ。
本作は単なる周年事業の映画ではない、と
ラインを引いているよう。
黒沢監督の映画はどこか観客に考えさせるあいまいさがあり
それが余韻となって後に引きます。
作品情報:
上映時間 120分
製作国 日本/ウズベキスタン
公開情報 劇場公開(東京テアトル)
監督 黒沢清
プロデューサー 水野詠子 ジェイソン・グレイ 西ヶ谷寿一
出演 前田敦子 加瀬亮 染谷将太 柄本時生 アディズ・ラジャボフ
公式サイト:/https://tabisekamovie.com/
Youtubeで予告を観る: