2019年度、経産省のJLOD「コンテンツグローバル需要創出等促進事業費補助金」を受諾しました。オリジナルの日本発コンテンツを海外展開する際の諸費用に対する補助金です。
おもに海外展開をみすえた映画の企画開発における諸費用にあてがうことができました。企画開発費が対象となる補助金は日本としては非常に画期的です。
難点は対象経費の半額だけ。
ただ条件さえあえば制作物も対象になり形が残るので、この補助金を使うことを視野にいれれば動かずに止まっている企画を少しでも具体的に進めるきっかけになります。
こんな人におすすめ
・海外むけのオリジナル企画(国際共同製作)がある
・脚本制作の資金(シナハンなどの開発費・翻訳費)が不足
・企画マーケットのある有名な国際映画祭マーケットに応募したい
・国際映画祭マーケットで企画のためにネットワークを作りたい
補助金がおりるまでのプロセスと感想・評価をできるだけシンプルにまとめます。ご参考にしてください。
目次
【補助金の説明】
コンテンツグローバル需要創出等促進事業費補助金とは?
経産省による、クールジャパンの流れを促進させるための補助金です。
最低必要条件としては日本オリジナルのコンテンツ(著作権)、海外市場展開、になります。
補助金額は1社につき上限3000万円(補助対象額6000万円)
この補助金には3種類あります。
(1)コンテンツ等の海外展開を行う際のローカライズおよびプロモーションを行う事業
コンテンツが主体となった又はコンテンツを有効活用した海外展開を行う際のローカライズ及びプロモーションを行う事業に係る経費について、その費用負担を軽減するため、当該事業を主体となって実施する企業・団体に必要経費の一部を補助します。
(2)海外展開を目指すコンテンツの企画・開発として試作映像等を制作する事業
海外展開を目指す映像コンテンツの企画・開発として試作映像等を制作する事業に係る経費について、その費用負担を軽減するため、当該事業を主体となって実施する企業・団体に必要経費の一部を補助します。
(3)デジタル技術を活用した先進性の高いコンテンツ等の開発等を行う事業
〈1〉世界に向けて発信するデジタル技術を活用した先進性の高いコンテンツの制作に関する補助金
〈2〉-1 ブロックチェーン技術を活用したコンテンツの流通に関するシステムの開発・実証支援
〈2〉-2 コンテンツ製作の生産性向上に資するシステムの開発・実証支援
映画製作者にとって関係があるものは1、か、2、になります。1はプロダクションを終え、作品として海外展開のきっかけ作りやプロモーションしたい人、2は映画の企画を持っている人となります。
映画企画開発費が対象となるのは2になります。
2に関するコンテンツとは
・映画
・テレビ番組
・配信番組
・アニメ
・ゲーム
・その他映像コンテンツ
ただし、以下のコンテンツは対象外になります。作家性が高い作品は内容によっては引っかかるので要注意です。
・成人向けコンテンツ(日本および展開国)
・政治的、宗教的宣伝意図のあるもの
・特定の政治的、宗教的立場を誹謗中傷するもの
事務局VIPOについて
VIPOは特定非営利活動法人 映像産業促進機構で、(映画だけでなく)日本のコンテンツの発展促進のための組織です。経団連をはじめとした映像関連業界や団体から作られています。
経産省がこの補助金を施行するにあたり、事務局として運営・管理を受諾しています。受諾事業なので、経産省が公募して複数の事業体から、事務局としてふさわしい団体・組織を公平な立場から審議し選出しています。
税金を使う事業なので、当然ですが、事務局として公平に選ばれているはずです…
この補助金も歴史が浅いことから、事務局側もさぐりながらやっているようなところがあります。正直、頼りない面もありますが、それがかえって親しみやすく相談しやすい雰囲気も持っています。
ちょうど2019年4月、説明会参加後にこの補助金について記事を載せています。
【申請から補助金が支払われるまでのプロセス】
受諾された事業内容:国際映画祭企画マーケット応募・出展(脚本英訳、企画書提出)
対象経費:シナハン(移動費、宿泊費込)、脚本を執筆するための経費、脚本料、翻訳料、海外マーケット出展料、海外向け企画書制作費、渡航費、宿泊費
期間 2019年3月~2020年3月
3月 JLOD施行の発表&説明会がスタート ※VIPOサイトや登録していればメールマガジンで案内が届く
4月 説明会参加 ※参加申し込みが必要
5月 応募に必要な書類準備や申請書作成
補助金の条件にあわせるため念入りに計画を立てることが必要になり想定以上に時間を要する
7月 申請(毎月最終営業日に応募締切、1ヵ月以内に採否連絡)
8月 受諾通知
申請後、2週間ぐらいで合格通知がくる
交付申請書を事務局に提出→形式審査あり
9月 交付決定
事業スタート(対象経費の発注可能)
交付決定前に発注したものに関しては、たとえ対象経費でも認められない
2月 中間審査 ※補助金の目的である国際映画祭マーケット2月開催にあわせ、それ以前の対象経費を審査
確定審査 ※国際映画祭マーケット参加経費のみ審査(2019年度JLOD事業は3月19日締切で時間がないため)
3月 修正済みの最終書類(捺印)提出
補助金が支払われる
【注意点】
JLODを申請、受託する際の注意点を箇条書きにまとめます。
・年度事業に対する補助金であること
必ず翌年3月までには終わらせる事業でなければいけない
・不明点は必ず事務局に確認し何を書けばいいのかクリアーにしておく
特に申請書類は3つの補助金すべて同じ様式・項目のため申請内容によっては明記する必要のない項目がある
・受託後、毎月末、進捗状況を事務局に報告
・企画開発に変更は当然
ー変更前に事務局に報告し相談
ー変更内容によって補助金対象事業として認められず補助金がおりない事態の恐れあり
・証憑(証拠)書類が手薄になりがち
-「補助金は税金」なので証明書となる書類提出が厳しい
-特に発注と支払いに関する書類の準備は入念に!発注ごとに見積書、発注書、受注書、請求書、支払証明が必要
-相みつが取れない場合は必ず選定理由書が必要
映画製作の場合、監督による選定や座組がすでにあることを選定理由書に明記
・支払証明
取引の証明として銀行振込のATM明細や預金通帳のコピーが必要
・海外事業社へ発注する場合はどんな書類が必要か確認するのが得策
ー基本、日本の事業社発注と同じ証憑書類が必要
ー発注書の代わりとして発注にかかわるメールのやりとりを提出する場合がある
ー加えてレート換算証明書が必要
海外送金の書類の写し(銀行から発行)
クレジットカード支払いの場合は、カード会社に明細を発行かネットから明細を印刷
・中間審査
できるだけ必要な証憑書類や領収書など現物をもっていきグレーな部分を取り除く
・確定検査
ー中間検査をうけての書類の正確さ、準備が重要
ここでつまづくと、補助金が支払われない経費が出てくる可能性が高くなる
不明な点は、事前にしつこいぐらい個人相談、もしくはメールで問い合わせる
・実務報告書
成果物とともに、補助金(対象経費)を使って何をしたのかを明記(証拠を提出)
・事務局とのつき合い方
ー補助金交付決定後、事務局から担当者がつく
ー基本は丁寧に対応してくれる
ー相談内容によっては、事務局から第三者委員会や経産省に判断をゆだねる場合がある
・要注意!2019年度の例外的事例
コロナ感染拡大にともない突然、展示会開催が中止になった場合、会場で配布するために作られたチラシ・ポスター、出展料などは対象経費から除外される。すでに制作済みで経費は発生済みだが、たとえ天災という理由で大きなイベントが突然中止になっても、補助金は支払われない!!!
【まとめ】
事務局の担当者には、信用を得ましょう。分からない点はその都度相談。なぜなら、どれだけ本気なのかが伝わるからです。そこで自然と信用が得られます。
残念ながら、コロナ感染拡大にともない、目的であった海外国際映画祭マーケットへの海外渡航はリスクがあると判断し参加を断念しました。しかし、補助金のおかげで、脚本(日本語・英語)、企画書が完成したため、いつでも動ける態勢を整えることができました。
この補助金の一番のネックは、補助金が半額しか出ないことです。半額は自分たちで準備しなければいけないので大きな負担はあります。その負担をどうするかがプロデューサーの正念場、さもなければチームの修羅場になります!!
そして、当然ながら企画を動かしていく気合と覚悟も必要とされ、自分の企画への熱意が試されます。
補助金は、使ってもらうために各省庁が予算から確保したものです。政府側としては補助金として決まった以上、使ってほしいお金なので、できるだけ利用することをおススメします。
2020年度の新たなJLOD補助金も決まりました。2019年度のJLODに比べて対象項目が新たに2つ加わっています。
コロナでどうなるか分かりませんが、説明会は配信されるようです。