総評 “環境よりも経済”を重んじるアメリカ社会に
キリスト教という面から切り込んだ問題作
ドラマ/サスペンス
評価 ★★★★☆ Very Good! 観る価値あり
目次
鑑賞理由
『タクシードライバー』の脚本家ポール・シュナイダーが
脚本を書き、イーサン・フォーク主演で
映画を撮った、というだけで興味を掻き立てられました。
数々の映画賞の受賞歴が太鼓判を押しています。
俳優のイーサン・フォークと言えば、
俳優業だけでなく、製作側に立ってそれなりに意欲作を
次々と発表しているため
彼の活躍には注目していました。
映画館の様子
4月21日(日)シネマート新宿、14:30~の回。
4月12日公開、第2週目の週末。
定員69名の劇場はほぼ満員。
客層は30代後半から70代までの男女が偏りなく
入っていました。
年齢は高く社会派の映画好きが前評を聞きつけ
来ているようでした。
映画の背景
構想はなんと50年ーー、
さまざまな映画や脚本を作る中、ずっと
温めづづけてきた作品となります。
宗教を扱う、ということは、
それほど重いテーマでもあり
タブーとされている問題を真正面から
向き合っているとうかがえます。
アメリカの大統領トランプは、「反・温暖化政策」をかかげ、
地球温暖化はでっち上げだと公言。
そして“環境より経済”を重要視しています。
それはなぜなのか、この映画は切り込んでいるのです。
キャスティング
主人公のイーサン・ホークは、とっくに旬をすぎ、
その顔には人生の酸いも甘いも経験したしわが
深く刻まれています。
表情だけをとってみても、この映画に深みを与えていました。
暗い重々しいストーリーに
その場を明るくするような花を添えるのは、
アマンダ・セイフライドです。
人は、暗黒の道に咲いている小さな花に目をとめ
かれそうになったら水をあげ
小さな花がリンリンと輝きを取り戻した時
自分の中にも歓びを見出し、
ささやかながら生きる糧にしていく本能が
あるのでしょう。
感想
環境破壊を筆頭に社会問題を
現代のアメリカのキリスト教という世界から
地方の小さな教会の牧師を通して描かれています。
もはやこの世には倫理や正義というものはなく、
個人の力ではどうしようもない無力感、
聖職者であるからこその絶望感になすすべがない…
それを知った時、人はどのように先を進めるのか?
そして人間は本能にはあらがえない、ことを
本作はまざまざと見せつけられます。
主人公の牧師は伝統と愛国心から
息子を入隊させます。
ちょうどイラク戦争が勃発し、息子は戦死。
父親として入隊を進めた罪悪感を背負って
孤独に生きています。
同じような孤独を抱えてしまった信者と
心が通じ合う最後は
人間の弱さゆえの救いなのかもしれません。
作品情報:
上映時間 113分
製作国 アメリカ・イギリス・オーストラリア合作 2017年
公開情報 劇場公開 トランスフォーマー
監督 ポール・シュレイダー
脚本 ポール・シュレイダー
出演 イーサン・ホーク アマンダ・セイフライド セドリック・カイルズ
公式サイト:http://www.transformer.co.jp/m/tamashii_film/
Youtubeで予告を観る:https://youtu.be/kgiOBMffwAk